本条蔵 -ホンジョウゾウ-

本やゲームなどの感想です。まだまだ移行作業中。概ね敬称略です…。

三田誠 「RPF レッドドラゴン 第四夜 夜会擾乱」

RPF レッドドラゴン 4 第四夜 夜会擾乱 (星海社FICTIONS)

RPF レッドドラゴン 4 第四夜 夜会擾乱 (星海社FICTIONS)

竜と契約を交わした、軍事大国・ドナティア。
テクノロジーにより急発展を遂げた、経済大国・黄爛。
そして、二国からの侵略に喘ぐ、小さな島・ニルカムイ。
三勢力が鬩ぎ合うニル・カムイを舞台に、「赤の竜」を巡る一つの伝説が幕を開ける…!

GMの三田誠を中心に、五名のプレイヤー(奈須きのこ虚淵玄紅玉いづき、しまどりる、成田良悟)が知略を巡らせながらダイスに運を託す、TRPGリプレイ方式のノベルです。豪華メンバー!

登場人物は、「赤の竜が狂って暴れてるので、討伐対を組むよー」ということで集めらた各勢力の精鋭、という感じ。
その精鋭とは、ドナティアの黒竜騎士・スアロー、黄爛の妖刀使い・婁(ロー)、半魔物の少女・エィハ、皇統種の少年・忌ブキ、そして、彼らを微妙なポジションから見守る不死商人・禍グラバ。
彼らが討伐隊に加わった事情や思惑は、それぞれに異なっている。そして、それぞれが呪いを受けた身だったり、人命を啜るのが大好きな妖刀にラヴ一直線だったり、特殊な体質だったり、壮絶な過去を抱えていたりする。キャラクタの設定だけでも既に、単なる「設定」ではなく「物語」の域に。

TRPGリプレイ、ではあるのだけれど、「シナリオに沿って、キャラクタが動かされてる」という感じじゃない。もう、各人が活き活き。
キャラクタとしての(物語内での)行動や物語、それ自体も面白いのだけど、その裏でプレイヤーとしてのメタな掛け合いが同時進行していくのが「ならでは」だなぁ。

禍グラバ 「『竜災保険』とかつくれば儲かるかなあ」
スアロー 「このパーティー、もう嫌!人命のことを考えるような人はいないの!?」
婁 「いやあ、人命のことはいつも考えていますよ」

3巻時点で「討伐隊」には離脱者が現れ、4巻ではむしろ「敵同士」になりつつあるキャラクタも。物語も佳境を迎え、遂に「赤の竜」との直接対決の場面も訪れます。
そして、そこには「あの一件さえなければこの伏線が…」「余程のことがなければ、このルートに入らないはずだったのに…」と頭を抱えるGMの姿が!

公式サイトでは、物語をBGM入りで楽しめる様子。こちらは、完結してからのお楽しみにとっておこうかな。
『レッドドラゴン』 | 最前線

藤栄道彦 「最後のレストラン 2」

最後のレストラン 2 (バンチコミックス)

最後のレストラン 2 (バンチコミックス)

悲観的な青年シェフ・園場 凌(そのば しのぐ)が、父から受け継いだレストラン「ヘブンズドア」には、時々妙なお客がやってくる。
その客とは、死を直後に控えた歴史上の偉人たち。あるときはジャンヌ・ダルクが、織田信長が、マリー・アントワネットが来店し、彼らは一様に困難極まりないリクエストを投げつけてくる。
曰く、「伝説の一皿となるような料理を持って来い」。「今、私が食べたいものを当てて持って来い」。「感涙する一皿を持って来い」。
果たして凌は、どんな一皿で彼らを満足させるのか、させられるのか…?

一話毎に偉人が来店する、連作短編形式の不思議レストラン物語です。
死の間際の物語なので、読後感は少ししんみりするものが多め。
でも、そこは一巻の台詞

よく 明日死ぬとしたら何が食べたい?…とか言いますよね
……でも
食べられるものじゃないんです そうそう死ぬ前になんて
でももし…食べられるとしたら…
何かが少しだけ…その…
……救われる…
そんな感じしませんか?

に集約されてる気がする。無常感をおぼえると同時に、どこか救われたような気持ちにもなるという…。
レストランの登場人物たちが、みな個性派揃いで、雰囲気自体はライトでギャグ寄りなのも、絶妙なバランスです。軽すぎず、重すぎず。

第二巻に登場するのは、ヒトラー、ダリ、関羽など。恥ずかしながら、ビリー・ザ・キッドって知らなかったよ。そしてクレオパトラさん素敵。素敵かわいい。
それぞれの人物背景なども掘り下げているので、歴史漫画としても楽しめる作品です。

もちろん、料理漫画としても面白いです。
シェフの作る料理だから、一般のご家庭では再現不可能なものもあるけど、食材自体が始めて聞くモノだったりすると(例:「山うに豆腐」「まくわうり」…etc.)、それだけで「おおお…(今度どこかで食べてみたい!)」ってなる。

余談ながら、以前感想を書いた
高瀬志帆 「おとりよせ王子飯田好実 1」 - 本条蔵 -ホンジョウゾウ-
よりも、「最後のレストラン」の方を先に読んでいて。件の物産展のチラシを見て、「おっ、これがあの『山うにとうふ』か…」と意気揚々と出かけていった、といういきさつがあったり。

長崎ライチ 「ふうらい姉妹 1」

ふうらい姉妹 第1巻 (ビームコミックス)

ふうらい姉妹 第1巻 (ビームコミックス)

想像力豊かだけどおばかな妙齢の姉・山本れい子と、しっかり者だけど やはりどこか抜けている小学生の妹・しおりの日常を描いた、4コマギャグ漫画です。

絵柄は一昔前の少女漫画のよう。世が世なら薄幸な書生さんと恋にでも落ちそうな美人姉妹ですが、彼女たちは飄々とアホな言動を展開していきます。どうしてこうなった。終始丁寧な言葉遣いなのが、また独特な空気感を生み出しています。

れい子「おねーちゃんはね いつも 太宰の字を見ると こうしたくなるの」

(姉、マジックを取り出しで、表紙の「太宰治」に「療」の字を付け足す)

しおり「(インチキ心霊療法みたい)」

れい子「そして次にこう」

(姉、今度は「療」の代わりに「癒」を書き足す)

しおり「(でも治った)(プラシーボ効果)」

大好きすぎる。
2巻も楽しみ!

高瀬志帆 「おとりよせ王子飯田好実 1」

おとりよせ王子飯田好実 1 (ゼノンコミックス)

おとりよせ王子飯田好実 1 (ゼノンコミックス)

公私ともに「ぼっち」気味なSEの青年・飯田好実には、秘密の趣味があった。
それは毎週水曜日、「ノー残業デー」の夜に届く、日本全国の美味いもの、すなわち「おとりよせグルメ」。
ある週には珍味が、別の週には高級肉が、そして時にはお酒が、好実の心と胃袋を満たす…!

 

一話毎にひとつ「おとりよせグルメ」が紹介される、ひとり飯レビュー&ぼっち生活日記。

この春にドラマ化された関係か、吉祥寺東急でタイアップ物産展をやっていたので、本書に掲載されてる「山うにとうふ」と共に購入してみました。
もっとも、物産展会場では、片隅で仁王立ちしていたケンシロウ等身大人形の方が目立ってたけれども!(同じく「コミックゼノン」で連載中の「DD北斗の拳」の関係らしい。こちらも同タイミングでアニメ化された模様)

読む前に想像していたよりも、テンションが高めというか、特殊効果が多いというか、表情が濃いというか。羽海野チカを色々三割増しにした感じ…?読んでいてちょっと疲れちゃう。
その分、楽しみにしていたものが届いた瞬間のボルテージMAX具合や、どこがどう美味いのかなどはストレートに伝わってくるのだけれども…。

ちょっと(悪い意味で)気になったのは、時々フラッと主人公の部屋に現れる姉の存在だなぁ。この御仁、勝手に荷物を開けて、勝手に喰っちゃう。その、「何しやがるテメエ」感がストレスになってしまって…なんとも。
続刊を買うより、公式ツイッターを覗いた方が、個人的には合ってるかも。

 

飯田好実公式Twitterアカウント
https://twitter.com/otoriyose_ouji

佐藤いづみ 「冷蔵庫探偵 1」

冷蔵庫探偵 1 (ゼノンコミックス)

冷蔵庫探偵 1 (ゼノンコミックス)

ケータリング(出張料理人)のレイコさんが、その家の冷蔵庫の中身を手掛かりに、色んな事件を解決していくプロファイリングミステリ。

レイコさんはあくまでも「人の家で料理を作る(または料理を持ち込む)」だけの人なので、起こる事件もせいぜい「パートナーが浮気?」や「同居人が失踪?」といった日常の延長線上のものばかり……かと思いきや、序盤で新米刑事・リョウ(料理関係と人間観察力がまるでダメ)が相棒になるので、時々「かなりの大事件」に駆り出されたりもする。

今までに自分が読んだ料理漫画って、男性が料理をするものが多かったので(例:「きのう何食べた?」「美味しんぼ」「沈夫人の料理人」「焼きたて!!ジャぱん」…)、ちょっと新鮮な感じがする。

で、女性料理人が主人公だというのもあってか、「陰陽五行」「マクロビ」などの薀蓄も入ってくる。もしかしたら、そのあたりに違和感(生理的に受け付けない感)を覚える読者もいるかもしれない。

元々、料理モノもミステリも好きだったけど、今は更に「自分が専業主婦になったからこその共感」なども入ってきて、色々と思うところが多かった。
子供がまだ小さいから(=外出あまりできない、趣味の内容と時間も限られる)、自分の日々の楽しみのなかで「食」は相当大きな割合を占めている反面、「自分と夫のごはんを作る」「離乳食を作って食べさせる」に費やす時間と労力がね、それなりにね。

食事は一日3回 食事の不満や寂しさも その分溜まるのは早いよ

アニメ 「Simoun(シムーン) DVD2巻」

Simoun(シムーン) 2 [DVD]

Simoun(シムーン) 2 [DVD]

日々激化する礁国からの軍事攻撃。
対する宮国では、精鋭部隊「コール・テンペスト」から犠牲者が出たことによって、レギーナ(リーダー)であるネヴィリルは苦悩し、隊員たちの間にも動揺が広がっていた。
そんな中、新隊員のアーエルは 共にシムーンを操縦するためのパル(ペア)を探すため、隊員のリモネに声を掛けるのだが…。

DVD第2巻には、少女たちの動揺が描かれる第3話「遠い戦争」、アーエルとリモネの即席ペアの諸々が描かれる第4話「近い戦争」、リモネの過去と 新隊員ドミヌーラの登場が描かれる第5話「白い孤独」が収録されています。

少しずつ、各隊員の「シムーンに乗る理由」や「迷い」などが明らかになっていく1巻。

モリナスやドミヌーラといった新顔が登場し、整備士ワポーリフなどもしばしば登場するようになり、画面が賑やか&華やかになってきた反面で、始めのうちは「シムーンでリマージョンを描く=神事」だと捉えていた 隊員や上層部が、徐々に「これは軍事行為である」と体感し始めるという、重く濃い内容の1巻でもあります。

DVDの1巻目を初めて観たときは 「よ、用語が多くて…ついていけるのか…?」と少し不安になりましたが、2巻は特に躓く箇所もなく。
余談ながら、1巻目は 返却する前にもう一度通しで鑑賞しました。「1話の前半だけ見直そう」と思っていたのに、面白くて最後まで観てしまった…。

3巻目も一緒に借りてきたので、週末にでも続きを観よう。たのしみ!

raiL-soft 「霞外籠逗留記」

記憶を失くした青年・築宮清修(つきみや せいしゅう)は、気が付くと小舟の上にいた。
舟の主であるという女性「渡し守」から勧められるまま、清修は ある旅籠に身を寄せることになる。
まるで無計画に改修を重ねたような、巨大で 外界と隔絶されたその旅籠には、たくさんの「お手伝いさん」や、彼女たちを統べる「令嬢」、夜毎に酒場で唄を吟じる少女「琵琶法師」、なぜか「鬼女」と呼ばれている図書室の司書らが暮らしていた。
築宮は、彼女たちとの触れ合いのなかで 失くした過去を取り戻すことができるのか、それとも…。


コンプしました。プレイ日記はこちらに。
霞外籠逗留記 (1) - 今日のゲーム
霞外籠逗留記 (2) - 今日のゲーム
霞外籠逗留記 (3) - 今日のゲーム
霞外籠逗留記 (4) - 今日のゲーム


【システム】 ★★★★☆☆

画面いっぱいに描かれた 立ち絵やイベント絵の上に重なるようにして、画面の半分くらいに 文字がどぱーっと表示される形式の、ノベル作品です。
選択肢は かなり少なくて、序盤の「ヒロインの選択」と 終盤の「エンディングの選択」のときくらいしか選択肢がない。本当に、「恋愛アドベンチャー」ではなく「ノベル」という印象の作品。

公式サイト
トップページhttp://www.liar.co.jp/raiL/にリンクし直してください。

の「システム」のページからも 「ノベルであること」へのこだわりが伺えますが、具体的には、プレイヤーが 「メッセージの縦書き/横書き」、「フォント」、「文字の大きさ」、「ルビの有無」、「テキストの表示位置」などを選択できるようになっています。

…でも。残念だけど、これらの設定は 力の入り具合のわりに、あまり使い勝手がよくなかった気がする。
「文字の大きさ」については、「大」でも やや小さめに感じてしまって、個人的には「フルスクリーン+フォント大」以外では疲れちゃうかな、という印象。モニターの解像度の問題なんだろうけど。
「テキストの表示位置」についても、例えば「立ち絵の女性と、文字が重なってしまって 読みづらい」→「文字表示位置設定を『画面の左』から 『画面の右』に変更」→「文字と一緒に 立ち絵も右に移動しちゃう」…orz、とか。

テキスト以外で気になったのは、「BGM」や「声」のオン/オフ設定はあるのに、それぞれの音量設定はない、という点。
シンプルな作りのゲームだけに、そういった 「シンプルな微調整」を出来るようにして欲しかった。


【キャラクタ】 ★★★★☆☆~★★★★★☆

メインの登場人物は5人くらい。シンプル!

築宮清修
 …主人公の青年。過去の記憶を持たない。礼儀正しく、潔癖で不器用な性格。
渡し守
 …主人公を旅籠へと導いた女性。般若の割面をつけている。面倒見の良い姉御肌。
令嬢
 …旅籠の若女将。表情に乏しいが、礼儀正しく 利発な印象の少女。
琵琶法師
 …酒場に現れ、直垂姿で琵琶を奏でる少女。言動は純真で、浮世離れした雰囲気を醸し出す。
鬼女
 …図書室の司書。言動に 知性と色気を同時に漂わせる、謎めいた女性。


【ストーリー】 ★★★★☆☆~★★★★★☆

「廊下の脇に水路を張り巡らせた、和風と中華風が8:2くらいの 巨大な旅籠」を舞台とした、幻想的で、どこか気怠く、ときに清々しく、妖しい物語です。
どのヒロインの物語(ルート)も、「清修の過去」「旅籠の不思議」「ヒロインの内面」を絡めながら進んでいくのですが、それぞれにウェイトや切り口が異なる感じ。

各ルートの中心軸は どれも印象的で、エンディングに至る流れもドラマティックなのだけれども…なにかこう、全体的に「もう一声」という感じがする。
上手く言えないのだけど、各シーンの「ネタバレ」のタイミングが早すぎるのかな、と。
例えば、「同じ時間帯に、違う場所に 同一人物が登場する」シーンがあったとしたら、私だったら しばらくの間は「どっちが本物なの?」っていう疑心暗鬼を楽しみたい、或いは 敢えて時間軸を曖昧に記述してもらって「…あれ?今のシーン、なんかおかしくなかったか?」みたいなのを味わいたいのだけど、この作品では 早々に「この人、いつもと雰囲気が異なるのではないか?」みたいな指摘が 地の文に出てきたりする。

あと、一部のエンディングにも ちょっと不満があるのだけれど…これはネタバレ欄に書こう。


【テキスト】 ★★★★☆☆

一文が長く、少し時代がかった文体であるため、人を選ぶ作品だろうな、と思います。
慣れてくると、その文体と「水路が張り巡らされた、複雑な造りの旅籠」とがリンクしてきて、波にたゆたうような 何とも言えない読感が味わえるのですが…。(ただしちょっと眠くなる)

上にも書いたけれど、「ネタバレが早めである」ところは 個人的にマイナスです。
中でも「鬼女」ルートでは、途中途中で 各章のタイトルみたいなものが表示されるのだけど、それが表示された時点で、もう その先の展開がだいぶ読めてしまう、という…。

あと、「各エピソード」と「そのルートの大筋の流れ」が 調和し切れていないというか、ルートによっては 「ひとつの物語」というよりは「断片の積み重ね」になってしまっていて、その辺りも やや微妙かな、とか。
一方で、それが「とりとめのない夢」のような、独特の世界観と なんとも言えない相互作用を及ぼしたりもするので…その辺は 難しい。


【ビジュアル】 ★★★★★☆

ややクセのあるキャラデザインですが、幻想的な舞台にマッチした 素敵な画だと思います。
えっちしーんの蠱惑的な魅力も素敵だけど、ホラーなシーンの迫力が、やっぱり凄いよ…。


【えっち】 ★★★★★☆

文学的な表現というか、やや古めかしい言い回しが多いのは えっちしーんにも共通なのだけど、それが変に浮くこともなく、逆に妖艶な雰囲気を醸し出すというか…。

長すぎず、それでいて濃厚で、わりと好み。あとは、ヒロインによる実況が もう少し控えめならね…と思います。


【音楽】 ★★★★★☆

オープニングの「カスミカゲロウ」、和風不思議音階で かなり好みでした。

兄弟ブランド(親ブランド?)であるライアーソフト作品、例えば 楽曲が神すぎる「腐り姫」や、曲のバラエティーが半端ない「サフィズムの舷窓」などと比べてしまうと さすがに一段落ちる印象ではありますが、一作品としては たぶん十二分。

ただ、琵琶法師のルートで BGMにあまり琵琶っぽさを感じなかったので、そこはちょい不満です。
だからこそ、プレイヤーの頭の中で「類い希なる音」への想像が広がる…というのも確かにあるのだけれども。


以下、エンディングに関するネタバレを 盛大に含みます。要注意。

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