本条蔵 -ホンジョウゾウ-

本やゲームなどの感想です。まだまだ移行作業中。概ね敬称略です…。

佐藤いづみ 「冷蔵庫探偵 1」

冷蔵庫探偵 1 (ゼノンコミックス)

冷蔵庫探偵 1 (ゼノンコミックス)

ケータリング(出張料理人)のレイコさんが、その家の冷蔵庫の中身を手掛かりに、色んな事件を解決していくプロファイリングミステリ。

レイコさんはあくまでも「人の家で料理を作る(または料理を持ち込む)」だけの人なので、起こる事件もせいぜい「パートナーが浮気?」や「同居人が失踪?」といった日常の延長線上のものばかり……かと思いきや、序盤で新米刑事・リョウ(料理関係と人間観察力がまるでダメ)が相棒になるので、時々「かなりの大事件」に駆り出されたりもする。

今までに自分が読んだ料理漫画って、男性が料理をするものが多かったので(例:「きのう何食べた?」「美味しんぼ」「沈夫人の料理人」「焼きたて!!ジャぱん」…)、ちょっと新鮮な感じがする。

で、女性料理人が主人公だというのもあってか、「陰陽五行」「マクロビ」などの薀蓄も入ってくる。もしかしたら、そのあたりに違和感(生理的に受け付けない感)を覚える読者もいるかもしれない。

元々、料理モノもミステリも好きだったけど、今は更に「自分が専業主婦になったからこその共感」なども入ってきて、色々と思うところが多かった。
子供がまだ小さいから(=外出あまりできない、趣味の内容と時間も限られる)、自分の日々の楽しみのなかで「食」は相当大きな割合を占めている反面、「自分と夫のごはんを作る」「離乳食を作って食べさせる」に費やす時間と労力がね、それなりにね。

食事は一日3回 食事の不満や寂しさも その分溜まるのは早いよ

アニメ 「Simoun(シムーン) DVD2巻」

Simoun(シムーン) 2 [DVD]

Simoun(シムーン) 2 [DVD]

日々激化する礁国からの軍事攻撃。
対する宮国では、精鋭部隊「コール・テンペスト」から犠牲者が出たことによって、レギーナ(リーダー)であるネヴィリルは苦悩し、隊員たちの間にも動揺が広がっていた。
そんな中、新隊員のアーエルは 共にシムーンを操縦するためのパル(ペア)を探すため、隊員のリモネに声を掛けるのだが…。

DVD第2巻には、少女たちの動揺が描かれる第3話「遠い戦争」、アーエルとリモネの即席ペアの諸々が描かれる第4話「近い戦争」、リモネの過去と 新隊員ドミヌーラの登場が描かれる第5話「白い孤独」が収録されています。

少しずつ、各隊員の「シムーンに乗る理由」や「迷い」などが明らかになっていく1巻。

モリナスやドミヌーラといった新顔が登場し、整備士ワポーリフなどもしばしば登場するようになり、画面が賑やか&華やかになってきた反面で、始めのうちは「シムーンでリマージョンを描く=神事」だと捉えていた 隊員や上層部が、徐々に「これは軍事行為である」と体感し始めるという、重く濃い内容の1巻でもあります。

DVDの1巻目を初めて観たときは 「よ、用語が多くて…ついていけるのか…?」と少し不安になりましたが、2巻は特に躓く箇所もなく。
余談ながら、1巻目は 返却する前にもう一度通しで鑑賞しました。「1話の前半だけ見直そう」と思っていたのに、面白くて最後まで観てしまった…。

3巻目も一緒に借りてきたので、週末にでも続きを観よう。たのしみ!

raiL-soft 「霞外籠逗留記」

記憶を失くした青年・築宮清修(つきみや せいしゅう)は、気が付くと小舟の上にいた。
舟の主であるという女性「渡し守」から勧められるまま、清修は ある旅籠に身を寄せることになる。
まるで無計画に改修を重ねたような、巨大で 外界と隔絶されたその旅籠には、たくさんの「お手伝いさん」や、彼女たちを統べる「令嬢」、夜毎に酒場で唄を吟じる少女「琵琶法師」、なぜか「鬼女」と呼ばれている図書室の司書らが暮らしていた。
築宮は、彼女たちとの触れ合いのなかで 失くした過去を取り戻すことができるのか、それとも…。


コンプしました。プレイ日記はこちらに。
霞外籠逗留記 (1) - 今日のゲーム
霞外籠逗留記 (2) - 今日のゲーム
霞外籠逗留記 (3) - 今日のゲーム
霞外籠逗留記 (4) - 今日のゲーム


【システム】 ★★★★☆☆

画面いっぱいに描かれた 立ち絵やイベント絵の上に重なるようにして、画面の半分くらいに 文字がどぱーっと表示される形式の、ノベル作品です。
選択肢は かなり少なくて、序盤の「ヒロインの選択」と 終盤の「エンディングの選択」のときくらいしか選択肢がない。本当に、「恋愛アドベンチャー」ではなく「ノベル」という印象の作品。

公式サイト
トップページhttp://www.liar.co.jp/raiL/にリンクし直してください。

の「システム」のページからも 「ノベルであること」へのこだわりが伺えますが、具体的には、プレイヤーが 「メッセージの縦書き/横書き」、「フォント」、「文字の大きさ」、「ルビの有無」、「テキストの表示位置」などを選択できるようになっています。

…でも。残念だけど、これらの設定は 力の入り具合のわりに、あまり使い勝手がよくなかった気がする。
「文字の大きさ」については、「大」でも やや小さめに感じてしまって、個人的には「フルスクリーン+フォント大」以外では疲れちゃうかな、という印象。モニターの解像度の問題なんだろうけど。
「テキストの表示位置」についても、例えば「立ち絵の女性と、文字が重なってしまって 読みづらい」→「文字表示位置設定を『画面の左』から 『画面の右』に変更」→「文字と一緒に 立ち絵も右に移動しちゃう」…orz、とか。

テキスト以外で気になったのは、「BGM」や「声」のオン/オフ設定はあるのに、それぞれの音量設定はない、という点。
シンプルな作りのゲームだけに、そういった 「シンプルな微調整」を出来るようにして欲しかった。


【キャラクタ】 ★★★★☆☆~★★★★★☆

メインの登場人物は5人くらい。シンプル!

築宮清修
 …主人公の青年。過去の記憶を持たない。礼儀正しく、潔癖で不器用な性格。
渡し守
 …主人公を旅籠へと導いた女性。般若の割面をつけている。面倒見の良い姉御肌。
令嬢
 …旅籠の若女将。表情に乏しいが、礼儀正しく 利発な印象の少女。
琵琶法師
 …酒場に現れ、直垂姿で琵琶を奏でる少女。言動は純真で、浮世離れした雰囲気を醸し出す。
鬼女
 …図書室の司書。言動に 知性と色気を同時に漂わせる、謎めいた女性。


【ストーリー】 ★★★★☆☆~★★★★★☆

「廊下の脇に水路を張り巡らせた、和風と中華風が8:2くらいの 巨大な旅籠」を舞台とした、幻想的で、どこか気怠く、ときに清々しく、妖しい物語です。
どのヒロインの物語(ルート)も、「清修の過去」「旅籠の不思議」「ヒロインの内面」を絡めながら進んでいくのですが、それぞれにウェイトや切り口が異なる感じ。

各ルートの中心軸は どれも印象的で、エンディングに至る流れもドラマティックなのだけれども…なにかこう、全体的に「もう一声」という感じがする。
上手く言えないのだけど、各シーンの「ネタバレ」のタイミングが早すぎるのかな、と。
例えば、「同じ時間帯に、違う場所に 同一人物が登場する」シーンがあったとしたら、私だったら しばらくの間は「どっちが本物なの?」っていう疑心暗鬼を楽しみたい、或いは 敢えて時間軸を曖昧に記述してもらって「…あれ?今のシーン、なんかおかしくなかったか?」みたいなのを味わいたいのだけど、この作品では 早々に「この人、いつもと雰囲気が異なるのではないか?」みたいな指摘が 地の文に出てきたりする。

あと、一部のエンディングにも ちょっと不満があるのだけれど…これはネタバレ欄に書こう。


【テキスト】 ★★★★☆☆

一文が長く、少し時代がかった文体であるため、人を選ぶ作品だろうな、と思います。
慣れてくると、その文体と「水路が張り巡らされた、複雑な造りの旅籠」とがリンクしてきて、波にたゆたうような 何とも言えない読感が味わえるのですが…。(ただしちょっと眠くなる)

上にも書いたけれど、「ネタバレが早めである」ところは 個人的にマイナスです。
中でも「鬼女」ルートでは、途中途中で 各章のタイトルみたいなものが表示されるのだけど、それが表示された時点で、もう その先の展開がだいぶ読めてしまう、という…。

あと、「各エピソード」と「そのルートの大筋の流れ」が 調和し切れていないというか、ルートによっては 「ひとつの物語」というよりは「断片の積み重ね」になってしまっていて、その辺りも やや微妙かな、とか。
一方で、それが「とりとめのない夢」のような、独特の世界観と なんとも言えない相互作用を及ぼしたりもするので…その辺は 難しい。


【ビジュアル】 ★★★★★☆

ややクセのあるキャラデザインですが、幻想的な舞台にマッチした 素敵な画だと思います。
えっちしーんの蠱惑的な魅力も素敵だけど、ホラーなシーンの迫力が、やっぱり凄いよ…。


【えっち】 ★★★★★☆

文学的な表現というか、やや古めかしい言い回しが多いのは えっちしーんにも共通なのだけど、それが変に浮くこともなく、逆に妖艶な雰囲気を醸し出すというか…。

長すぎず、それでいて濃厚で、わりと好み。あとは、ヒロインによる実況が もう少し控えめならね…と思います。


【音楽】 ★★★★★☆

オープニングの「カスミカゲロウ」、和風不思議音階で かなり好みでした。

兄弟ブランド(親ブランド?)であるライアーソフト作品、例えば 楽曲が神すぎる「腐り姫」や、曲のバラエティーが半端ない「サフィズムの舷窓」などと比べてしまうと さすがに一段落ちる印象ではありますが、一作品としては たぶん十二分。

ただ、琵琶法師のルートで BGMにあまり琵琶っぽさを感じなかったので、そこはちょい不満です。
だからこそ、プレイヤーの頭の中で「類い希なる音」への想像が広がる…というのも確かにあるのだけれども。


以下、エンディングに関するネタバレを 盛大に含みます。要注意。

続きを読む

ソフトハウスキャラ 「王賊」

強大な武力を誇るビルド王国によって 各国が侵略されていく情勢下、傭兵の青年・ジン=アーバレストは、弱小国・エルト王国に請われて 対ビルドの総指揮を任されることとなった。
エルト王国は、優秀な人材が 相次いで亡くなった影響もあり、今や国土の半分をビルド王国に奪われていた。
ジンは、エルト王国宰相のムスト、および 若き女将軍・アルイエットらと共に、起死回生の攻防戦を始める…。

※1周目、クリアしました。プレイ日記はこのへんに。
王賊 - 今日のゲーム
王賊 (2) - 今日のゲーム
王賊 (3) - 今日のゲーム
王賊 (4) - 今日のゲーム
王賊 (5) - 今日のゲーム


【キャラクタ】 ★★★★★☆

適度に個性的なキャラが揃った、とても心地よい世界でした。
どのキャラも、作り手から大事にされてる感じがする。(主人公にヤられちゃったりはするけど!)
以下、ざっくりと主要人物の紹介を。

ジン=アーバレスト
 …主人公。エルト王国の軍師として雇われることになった傭兵。女好き。

奈津山八重
 …主人公の側近メイド。極めて優秀。

アルイエット=ウルザー
 …急逝した父将軍の後を継ぐべく、エルト王国軍の総大将として 慣れない役目を担うことになった ヒロイン的女性。真面目だが、少し抜けてる面も。

ムスト
 …エルト王国の内務大臣。外見は幼女だが、かなりの年齢であるとかないとか。

エルネア
 …エルト王国の女王。王の亡き後、お飾り的なトップとして君臨。

一葉
 …凛とした立ち振る舞いの、奈宮(なのみや)皇国の皇女。奈宮皇国とエルト王国は、対ビルド連合として協力しあう関係。

ルティモネ
 …ノイル王国の姫。温室育ちで、気弱な性格。ノイル王国とエルト王国は、対ビルド連合として協力しあう関係。

ネイ
 …ヴィスト王国の突撃軍団長を務める、獣人族の女性。気が強く、真面目な性格。

ケーニスクフェア
 …ヴィスト王国の飛竜軍団長を務める、「森の住人」族(≒エルフ)の女性。有能だが暴走しがち。ジンと過去に何かあったようだが…?


【システム】 ★★★★★☆

  1. 「ミッション選択画面」で、複数ある「イベント」と「ミッション(マップ攻略)」を任意順にチョイス
  2. 「イベント」では、女性陣とのラヴイベントや、自軍・敵軍で発生する諸々のイベントが鑑賞できる
  3. 「ミッション」を選ぶと、SRPG風味のバトルに突入(公式サイトの下部を参照下さいな)
  4. 「ミッション」には「重要ミッション」と「普通のミッション」があり、前者をクリアすると ストーリーが進む(選択できるイベントやミッションも増える)

…という流れのゲーム。

機能としては、「既読メッセージスキップ」、「メッセージログ読み返し機能(音声再生可)」、「音楽/効果音/ボイスの各音量調節」、「ノベル時の 随時セーブ&ロード可」、「バトル時の 自軍ターンでの随時セーブ&ロード可」、「バトル時の 戦闘エフェクト表示/非表示」など、一通りなどシステムが揃っています。

「キャラ毎の音声オン・オフ」はなかった気がするけど、特に必要性を感じなかったので 無問題。

他に 欲しかった機能を挙げるとするなら、「バトル中に、自軍ユニットターンで、随時ロード可(または、ボタンひとつで『タイトルに戻る』)」くらいかな。
自軍ユニットが倒れたときに、即リセットしたいのに 毎回「ゲーム終了」→「再起動」→「ロード」ってやるのが、少し面倒といえば面倒だった。…まぁ、あんまりリセットが容易すぎても、盛り上がらないかもしれないけれど。

バトルの難易度は絶妙。
積極的にレベル上げ(それ用のマップもある)をしなくても なんとかなるけど、気を抜くと 主要キャラが1ターンで倒されちゃったりもする。
キャラを育てて 技能の入れ替えをやりくりしたり、出撃ユニットをやりくりしたりするのも楽しい。
ただ、バランス面で、魔法が全般的に強すぎな気はする。そこだけ、もう一声かも。


【ストーリー】 ★★★★★☆

ジンが 打倒ビルド王国に意欲を見せる理由や、エルト王国内の様々な人間模様、そして ビルド王国に倒されていった勢力の物語、探索中のミニイベントの数々など、質・量ともに充実した内容でした。
名もない一兵卒の汎用会話イベントまでが、結構工夫されていて楽しい。

軽すぎず重すぎず、程良く「楽しみながら味わえる」テンションとテンポ。


【ビジュアル】 ★★★☆☆☆~★★★★☆☆

微妙…かな…。
元々のキャラデザがやや微妙な上に、立ち絵と一枚絵、イベント毎の一枚絵のデザインにも ちょっとバラつきが。

もっとも、プレイしているうちに あまり気にならなくなってくるとは思う。たぶん、「絵」以外の部分での キャラクタの「描き方」が丁寧なんだろうな。


【えっち】 ★★★★☆☆

「The エロゲー」って感じだ!

  • 主人公は有り得ん絶倫っぷり!連続5回6回余裕だぜ!
  • 女性の9割が未経験者。膜はやたらと丈夫だけど、前も後ろもすぐに感度が良くなるよ!
  • 無理矢理ヤられ続けると、なぜか主人公に惚れるよ!

……様式美様式美。
エロさはあまり無いものの、女性陣のツンデレっぷりや、和姦になってからの雰囲気なんかは上々です。


【音楽】 ★★★★☆☆

普通に「ナイスBGM」程度…かな。


【クリア後特典】 ★★★★★★

クリアすると、本編に収まりきらなかったっぽいミニイベントや設定ネタなどを、色々と見ることができます。こういうところからも、「キャラの大事にされてる感」が伝わってくるなぁ…。

今まで、ソフトハウスキャラの作品に対しては 「話題になった作品だけを、人から借りてプレイする」程度の姿勢だったのだけど、今後は「新作情報をこまめにチェックして、物によっては発売日に予約」にしようかなって思う。

Innocent Grey 「PP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞」

昭和十一年。それは、日本が 軍国主義に向かって加速しつつあった頃。
神楽坂のジャズバー「CADENZE(カデンツァ)」で ピアノ弾きとして働く青年・玖藤奏介(くどう そうすけ)は、あることがきっかけで 殺人事件の容疑を掛けられてしまう。
奏介は、事件当時の 己の記憶の曖昧さに混乱しながらも、隠れ家に潜伏しつつ、周囲の人々――出版社に勤める 幼なじみの女性・橘美華夏(たちばな みかげ)、事件直後に出会った少女・白河綾音(しらかわ あやね)、そして 謎の少女・御巫久遠(みかなぎ くおん)らと共に、事件の真相に迫ろうとするのだが……。

※シナリオおよびCG、コンプしました。


【ストーリー】 ★★★☆☆☆

ミステリアス&サスペンスな主軸と、奏介を巡る女性たちの感情模様、事件を巡る 各勢力の攻防……などなど、全体的に なかなか魅力的なのですが、要所要所で「あと一歩感」や「ご都合主義」が目立つのは残念です。
事件後に関わることになる 謎組織「清流会」(トップは国粋主義者っぽいのだが、組織自体は「ちんぴら集団」風)とのアレコレも、かなり荒っぽくて強引だったしなぁ……。

「ミステリ」としての出来でいうと、前作「カルタグラ」を下回ると思う。「一作品」としての出来では……やっぱり下回っちゃうなぁ。

前作といえば。
前作は「遊郭の居候が主人公の探偵モノ(和風)」、今作は「バーに勤めるジャズピアニストが主人公の逃亡劇(やや洋風)」、という対比が面白かった。季節も、前作が冬で、今作が夏だし。

閑話休題
主人公の「本命」がはっきりしているゲームって、匙加減が難しいよなぁ、と思う。「Night Demon -夢鬼-」や「真章 幻夢館」などもそうだったけど。
構造上どうしても 各シナリオの「共通部分」が長くなっちゃうところとか、プレイヤーと 「本命」キャラとの相性がイマイチだったときアレだよなぁとか、主人公の「本命」への執着が描写不足だったとき 全体が締まらないとか、マルチエンディング(他のヒロイン)に至る「心変わり」を描ききれるかどうか、などなど。
その辺りの諸々も、この作品では もう一声だったと思います。
「共通部分の長さ」に関しては、後述の 「縦書き+各ヒロイン視点」という特徴を活かして、「特定のエンディングを見ると、各ヒロイン視点の 新規シーンが追加される」などがあれば よかったんじゃないかな。

でも、エンディングは どれもそれぞれに余韻が残って印象的でした。Bad Endも含めて。


【キャラクタ】 ★★★★★☆(主人公:★★★☆☆☆)

主人公が、「(物理的には)強いけど(精神的に)かなり弱い」上に、肝心なところでは その腕っ節もイマイチ、加えて 女性陣に尻を引っぱたかれないと動かない、というか 自分から思考しようとしない感じがプレイヤーを苛々させたりさせなかったり。

玖藤奏介(くどう そうすけ)
…バーのピアノ弾き。昔は相当やんちゃをしていた。

白河綾音(しらかわ あやね)
…主人公の無実を信じ、事件の真相解明を提案する 快活な少女。

橘美華夏(たちばな みかげ)
…主人公に懸想しながらも、なかなか素直になれない 面倒見の良い女性。

菱谷琢磨(ひしや たくま)
…主人公や美華夏の幼なじみ。現職の刑事。

玖藤柚芭(くどう ゆずは)
…主人公の妹。最近まで、美華夏の実家に預けられていた。

護堂弦一郎(ごどう げんいちろう)
…バーのマスター。主人公を支えながら、関係者たちが落ち合い、相談する場を提供する。

韮崎璃宝(にらさき りほ)
…バーの同僚である歌い手。妖艶な女性。

高梨千花(たかなし ちか)
…バーの同僚であるメイド。言動がおどおどとした少女。

相馬葵(そうま あおい)
…「清流会」の女幹部。主人公を自分の意のままに使うことを快としている。

御巫久遠(みかなぎ くおん)
…ふと現れては 謎めいた言葉を残していく、頭脳明晰な少女。


【システム】 ★★★★★☆~★★★★★★

立ち絵があって、画面下にメッセージボックスがあって、横書きのテキストを読み進めていると 時々選択肢が登場する、という オーソドックスなノベル形式の作品です。
それらに加えて、時々 「縦書き+各ヒロイン視点」の、「一方 その頃あの人たちは…」みたいなテキストになるのが特徴的です。同じような作りのゲームとしては、TYPE-MOONの「Fate/stay night」あたりが有名か。

セーブ箇所は100箇所くらいあるし、たしか セーブデータにコメントがつけられたはずだし、随時セーブ&ロード可(選択肢でのセーブも可)なので、その辺りは問題なし。

既読メッセージの早送り等、メッセージ関連のシステムも一通り揃っています。
他にも、効果音とBGMの音量調節が 別々に行えるなど、充実した調整周りでした。

長時間プレイしていると、画像に 一部ドット落ちっぽい症状が現れることがあったのですが……これは旧型PCの処理能力の問題なのかもしれない。


【テキスト】 ★★★★★☆

可もなく不可もなく、読みやすい。ちょっとベタなところは多いけど、これはストーリーによるものなのかも。
前作の誤字・誤表現率を考えると、格段に進化した印象です。


【ビジュアル】 ★★★★★☆~★★★★★★

杉菜水姫氏による、ムーディーかつ繊細な 美麗イラスト群。
個人的に、アリスソフトの「おにぎりくん」氏、Ciel 「Tony」氏、元ニトロプラスの「中央東口」氏、TYPE-MOONの「武内崇」氏あたりと並んで 好きな絵です。

ただ、立ち絵と 一枚絵(イベント絵)のキャラデザのギャップがかなり大きいところ(久遠なんて別人だよ……)は、今後に期待したいところ。


【音楽】 ★★★★★★

もしもあなたが今 このゲームの購入を考えていて、目の前に「通常版」と「初回限定版(設定資料集&2枚組サントラ同梱版)」があるのであれば、迷わずに後者を手に取るべき。

しっとりとしたBGM群といい、挿入歌の本格ジャズ楽曲「all the way」といい、前作並に 良い仕事してます。BGMの中では「美華夏のテーマ」が一番好きかな。

ただ、前作のような「しっとりとした暗い曲」はやや少ないので、その辺が微妙に残念というか、もう 単純に好みだけの問題なんですけれども。

ストーリーやビジュアルとの相性も上々でした。むしろ、ストーリーが 音楽に負け気味ではある…。
公式サイトに視聴ページがあるので、ご興味ある方は是非。


【エンドロール】 ★★★★★★

エンディング毎に、エンドロールのデザインと 使われる楽曲が異なる、というのは 意外とありそうでないパターンかも。
「正エンディングのみ曲が変わる」という作品は それなりにあるけど、このゲームは キャラ毎に ほぼ全て違ったデザイン&曲だったはず……。これは良かった。


以下、エンディング関連のネタバレを含みます。

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ニトロプラス 「沙耶の唄」

主人公の青年・匂坂郁紀(さきさか ふみのり)は、ある事故の後遺症により、周囲の人間や景色など全てが「グロテスクな肉塊」として認識されてしまうという現象に悩まされていた。
己を取り囲む環境の激変に 精神を蝕まれていく郁紀だったが、ある日彼は、唯一「人間の姿」として認識できる少女・沙耶と出会う。
失踪した父親を捜しているのだという沙耶に、郁紀は次第に惹かれていくのだが…。

事前に「狂気」「沙耶という少女」「病院」というキーワードのみがインプットされていたので、「沙耶という妹的少女が精神を病んで入院してて、主人公はその娘を見守りつつ狂気に感染していく」ようなイメージでプレイし始めたら……病んでいるのは自分でした。あわわ。

さて。

この作品は、シナリオ分岐型のノベルゲームです。全てのエンディングを見終わるのに 3~5時間程度しか掛からない、ボリューム控えめの作品。

上記のストーリー概要からも伺えるかと思いますが、ジャンルは「日常から逸脱していく純愛ホラー」です。
「背景CGのほとんどが肉塊」というあたり気合いが入っていますが、「グロテスク画像にエフェクトをかける」設定もできますよ。私はその設定を使わなかったので、実際どんな感じになるのかわからないのですが、まぁ、お好みで。

肉塊と化してしまった友人たちとの関係に戸惑いながら、郁紀は沙耶の父親探しをする。そんな郁紀のことを、友人たちは心配する。そして沙耶は、郁紀が少しでも快適に過ごせるように手を尽くす。
…と、それぞれが それぞれのために動いているだけなのに、何故か 運命が軋んでいってしまう。それが哀しくて、なのに幸福で、グロテスクで、デカダンで、インモラルで、だけど美しくて。
クリアしてから一週間経つのですが、まだ余韻に浸っています。

シナリオは、「Fate/Zero」や「魔法少女まどか☆マギカ」でもお馴染みの虚淵玄氏です。推して知るべし、というか何というか。

以下、盛大にネタバレを含みます。未プレイの方はご遠慮下さい、っていうか買うがよいのです!廉価版なら3,000円しないぞ!ついでに「Phantom INTEGRATION」と「鬼哭街」も買ってしまえ!

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Innocent Grey 「カルタグラ ~ツキ狂イノ病 ~」

時は昭和初期、戦後の混乱が残る 上野の街…。
遊郭・雪白(ゆきしろ)に居候する青年探偵・高城 秋五(たかしろ しゅうご)は、かつての上司である刑事・有島から、ある良家の息女失踪事件についての捜査を依頼される。
そして同じ頃、街は連続猟奇殺人事件の影に怯えていた…。

上記のリンクは廉価版ですが、私がプレイしたのはこちらのオリジナル版なので、もしかしたら微妙に内容が違っていたりするかも。
警告:アダルトコンテンツ

他に、各種移植版や同梱版も出てるみたい。
カルタグラ~魂ノ苦悩~ (2800コレクション) 和み匣 なごみばこ|購入特典 テレカ|メディアランド 杉菜水姫 イノセントグレイ Innocent Grey premium box 「PARANOIA(パラノイア)」


【システム】 ★★★★★☆

既読/未読判定あり(既読部分は自動でメッセージが早送りされる)、キャラ毎に音声のオン/オフ設定可能、選択肢画面でもセーブ可能、等々、上々の快適プレイが可能です。


【文章】 ★★★☆☆☆

誤字脱字率はかなり高いです。単純な誤変換に始まり、「○○(妹)は××(兄)の妹で…」となるべきところを「××(兄)は○○(妹)の妹で…」と記述してしまっているようなミスまでいろいろ。


【ストーリー】 ★★★★☆☆

「ミステリ」というよりは、「サイコサスペンス」や「しっとりとした恋愛劇」としての方が魅力的かな…。これについては、ネタバレ欄でもう少し触れます。

すべての謎が解ける真のエンディングがひとつ、バッドエンド・デッドエンドが幾つか、数名のヒロインとのハッピーエンドやノーマルエンドが3種類程度、あります。(私は バッドエンドかノーマルエンドをまだひとつ見てない)

ストーリー展開のテンポや、各エンディングは けっこういい感じなのですが…ストーリー分岐と各ヒロインエンドが 圧倒的に足りていない気がします。
「なぜこの人が助かるルートがないんだー!」とか悶えながら反復プレイしていました…。このあたり、コンシューマー移植版(「カルタグラ 魂の苦悩」)では どうなっているのかしら。


【キャラクタ】 ★★★★★☆

主立った登場人物を ざっとご紹介。

秋五…主人公の青年。遊郭の居候で探偵。やや頼りない。
和菜…捜査パートナー的メインヒロイン。おっちょこちょい、前向き、天然。
由良…失踪中。ミステリアス。
有島…元上司。渋い、苦悩するオジサマ。
冬史…裏の世界の仕切り役。隻腕。
雨雀…雪白の経営者であり、情報屋であり、かつて遊女でもあった姐御。
凛 …雪白の遊女。屈託がなく、やや悪戯者。
乙羽…雪白の遊女。キツい性格。
初音…雪白の下働きの少女(遊女見習い)。健気。
七七…主人公の妹。一人称・ボク。頭脳明晰だが性格に難あり。
楼子…七七の学友。おっとり天然。

ヒロインの和菜がややうるさくて ちょっと疲れる点、主人公の秋五が やや頼りなく 時折冗談などが空転しがちな点以外は、とても魅力的なキャラクタ勢でした。ネーミングセンスが、またすごく好み…!


【CG】 ★★★★★★

今までプレイしたゲームのなかでも、かなり上位に食い込む美麗さでした。時代と場所柄、和服のひとが多いのも素敵…。
凄惨な事件現場のCGであっても、迫力と共に 美しさを感じてしまうくらい。素晴らしい!


【音楽】  ★★★★★★

メニュー画面BGMの「慟哭」、回想シーンなどのBGM「月の涙」、スタッフロールの「久遠…」などなど、魅力的な楽曲が多かったです。
遊郭のBGMなども、それぞれ シーンにマッチしていて 良かった…。


【エッチ】  ★★★★★☆

各シチュエーションがとてもよい感じです…が、各エッチが佳境に差し掛かると 必ず「中」か「外」かの選択肢が出てきて、それが逆に醒めるような、煩わしいような。
しかもこの選択、分岐でもなんでもないんだぜ…?


【総評】   ★★★★★☆

要所要所に(いくつか致命的な)ツメの甘さはあるものの、トータルではかなり上質の作品だと思います。コンシューマー移植版の方も気になります…。


以下、ネタバレ(真相バレ)を含みます。

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