松井多絵子 「歌集 えくぼ」
※実際は、タイトルの表記が「えくぼ」のように「く」だけ小さくて、それ自体をえくぼのように見せるような遊びが施されています。(記事タイトルやAmazonリンクではフォントが弄りにくいので、上記は全て同じ文字サイズになっています。)
私も所属している短歌結社「未来短歌会」の先輩である、著者・松井多絵子さんから頂いた一冊。
ありがとうございます!!
著者がどのくらい先輩かというと、本書の発行年が9年前の2008年で、そのときのあとがきに「先生に師事して15年になり~」とあるくらい。私は2013年入会だから、未来歴(SF風味ですねこの言葉は)だけでも20年の開きがある。
自然、人生においても先輩であるわけで、となれば「旧仮名&文語調」……かと思いきや、新仮名&口語寄り。そういえば、「未来」の新年会でお会いした折にも、「若いかたの歌が好きだわ」と笑って仰っていたっけ。
閑話休題。
題材として多く歌われているのは、日々の発見や、旅行先でのあれこれ、そして時々、社会や他者へのちょっとした皮肉かな。
以下に、好きなお歌を5首引用させていただきます。
B5判原稿用紙よ、しろたえの二百の窓をひらいて欲しい
ゆうぐれの風が乗りてはすぐ降りる今日も空き地にある三輪車
冷蔵庫の卵のための十八の座席はつねに空席があり
オランダの酒場の男女が絵のなかに四百年も酔い痴れている
貴女だって冬眠したらいいのにと夢の草葉の鈴虫が言う
……引いてみて気づいたけど、本書には、数字の織り込まれたお歌がわりと多いのかもしれない。
引用の通り、「理系!」という数字使いではなく、「さりげない具体描写の妙」という感じ。例えば、○階とか、○人とか。
全体を通して、「勉強のために一生懸命に読む」という固さではなく、純粋に楽しみながら、ときに驚きながら味わえる一冊だと思います。
頂いた御本を、心から「面白かったです!ありがとうございました!」って言えるの、嬉しい。
(いや、まぁ、本当は、どんな歌集も楽しみながら読みこなせるなら一番だし、そうなるためにはまだまだ「勉強のため!」みたいな読書も必要なわけだけれども。)
巻末には、大島史洋先生(松井さんは大島先生に師事している)の解説があって、先生の好きな十首が挙げられています。
……。
あわわ、一首も被ってない。
そちらの十首が気になるかたも、是非実際に手にとってみて下さいね!