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本条蔵 -ホンジョウゾウ-

本やゲームなどの感想です。まだまだ移行作業中。概ね敬称略です…。

俵万智 「プーさんの鼻」

プーさんの鼻

プーさんの鼻

自分が、結婚以降 短歌から遠ざかってしまった一因は、かつて恋愛がらみの短歌ばかり作っていたもんだから、なんだか立ち位置との折り合いが付かなくなった……みたいなのがあって。

そんな七年間で、ほぼ唯一購入した歌集が、この「プーさんの鼻」。
俵万智ですよ。短歌はおろか本を全く読まない人にまでその名前と第一歌集のタイトルが知れ渡ってて、最近では国語の教科書にも載って(いるらしく)て、歌人・枡野浩一をして『こわいのは生まれてこのかた人前であがったことのない俵万智』と詠ましめる、とにかくそんな俵万智なんです。
1997年に発売されて話題となった「チョコレート革命」以来、8年振りの新歌集。買うでしょ。

……と購入したものの、前述のように何だか「折り合いが付かない」感じで 読みかけては中断したり、結婚当時はまだ「子供」という存在がピンと来ないモノだったり(子供はどちらかというと嫌いだったのです…)、いざ子供が生まれたら生まれたで しばらくは寝不足で頭の中が「寝ろ!寝て下さい!」一色だったり、PC版「シュタインズ・ゲート」(ゲーム)がなかなかコンプできなかったり、「シヴィライゼーション4」(ゲーム)も面白かったり、そんなこんなでまた数年が経ち。

やっと最近、本を読んだり短歌を詠んだりする余裕が出来てきたので、満を持して通読してみました。

厳密には、アレだったりします。
少し前に、(個人的には)難解としか思えない、意味がわかっても良さがわからない、みたいな短歌を幾つかまとめて読んだことがあって。
そんなときに、「やっぱり文語体は難しいにゃー…俵万智みたいな読みやすいのがいいにゃー…」と無性に俵衝動に駆られて読み始めたものだったりするのですが、数首読んで気付いた。俵万智、別に口語一本槍じゃなかった。

朝も昼も夜も歌えり子守歌なべて眠れと訴える歌

文語っぽい表現の歌もそこそこ多いのに、「難しい」「取っつきにくい」印象は皆無。
それだけこなれてる、ということなのかもしれない。

もちろん、口語メインの歌も多いよ。

親子という言葉見るとき子ではなく親の側なる自分に気づく

時差はいつも酒の差としてどちらかが酔ってかけてる国際電話

歌集としてはもちろん、「あるある育児ネタ本」としても面白かった一冊でした。
もはや「懐かしい」の域に達しつつある息子の乳幼児期を思い出しつつ、苦笑いしたり、温かい気持ちになったり。

子供ネタが苦手な方なら、「プーさんの鼻」や「夏の子ども」など、特定の章だけ飛ばしてしまえば、他の歌集と同じように、切なかったり生々しかったりする恋愛短歌や、旅情短歌、家族短歌などがお楽しみ頂けます。
頂けますが、それは「一冊の本の約半分を読み飛ばす」ことと同義だったり…。

子供関連以外の話をすると。
「父の定年」の章は、以前の歌集にも度々収録されていた父親短歌の、アンサーソングのような味わいがあって。
「弟の結婚」は、少しだけブラコン気味と言いましょうか、目出度くも切ない心情が、何とも言えない味わいの章でした。異性のきょうだい、いいなぁ。
それ以外の章は、「少しだけいけない恋をしている」印象の歌が多いかな。
…うん。やっぱり新婚当時に読むべき歌集ではなかったかもしれない。「子供」的な意味でも、「恋愛」的な意味でも。

アンサーソングと言えば、例えば『六年とう月日~』の歌には、『それならば五年待とう~』(「サラダ記念日」)を思い出したり。
実際には関連など特にないのかもしれないけど、「もしかして」と想像できるワードが、幾つかの歌にあって楽しかったです。

恋愛短歌は、例によって「抱く」「口づけ」などが多めではあります。まぁ、恋愛ですし。
それに、L'Arc-en-Cielが「鮮やかに降り注ぐ」のに比べたら全然アレですけど。あ、でもラルク大好きです。CDもかなり持ってるぞ。
http://katuru2ch.blog12.fc2.com/blog-entry-2984.html

閑話休題。

なんだか、「既刊の歌集を読んでることが前提」みたいな感想になっちゃったけど。
初見でもわかりやすいし、洗練されているし、味わい深いし、切ないし、艶やかだし、だけど、既刊作品を未読の方に「最初に手にとるべき俵万智の本」としてプッシュしたいかというと、ちょっと違う気はする。

「これから俵万智の短歌本を読みたいんだけど」という方には、がっつり読みたい場合は「サラダ記念日」か「かぜのてのひら」、サラッと読みたい場合は「とれたての短歌です。」か「もうひとつの恋」をプッシュしたい気持ち。
「とれたて~」と「もうひとつ~」は、浅井愼平の素敵写真とのコラボが美しい一冊です。初めて手に取った頃は、浅井愼平には「象印クイズ ヒントでピント」の印象(最終問題でこのひとがボタンを押すと女性チームに死亡フラグが!)しかなかったのも、良い思い出…。

サラダ記念日 (河出文庫―BUNGEI Collection)
かぜのてのひら (河出文庫)
とれたての短歌です。 (角川文庫)
もうひとつの恋 (角川文庫)

でも、俵万智ビギナーが「幼児を抱えている親御さん」な場合は、猛プッシュしたい一冊です。
「なんで子供はタグをがじがじするのが好きなんだぜ?」みたいな、共感ばりばりの歌が多いよ。