本条蔵 -ホンジョウゾウ-

本やゲームなどの感想です。まだまだ移行作業中。概ね敬称略です…。

安斎育郎 「だます心 だまされる心」

だます心 だまされる心 (岩波新書)

だます心 だまされる心 (岩波新書)

「だまし」は常に人の身近に存在する。
例えば、手品や推理小説は「だまし」を楽しむものだし、落語や川柳にもオチという形で「だまし」が潜んでいる。
「だまし」は私たちを楽しませてくれる一方で、悪徳商法や詐欺などは「だまし」を使った巧妙な罠を仕掛けてくる。
人はどうして騙されるのか、そして、騙されないようにするために必要なものとは何か。

最初、「ざます心」と打ち込みそうになって、なんかもう今日はやめちゃおうかなって気分になったザマス。でも続ける。

本書は、身の回りの微笑ましい「だまし」から、政策誘導や犯罪としての「だまし」、そして科学やオカルトの歴史を「だまし」に着目して紐解いた一冊です。

「だまし」の例としては、こういった「騒動」が数多く例示されています。
賢馬ハンス - Wikipedia日本の脚気史 - Wikipedia

どれも興味深くて、雑学本としてもかなり楽しめました。
また、それぞれの心理的背景の考察(なぜ「だまし」が起きたのか)にも考えさせられるものがあります。

一方で、読み進めながら、ちょっとモヤモヤしたところもあって。
例えば、「こんな手品があります。みなさん、トリックを考えてみてくださいね!」で終わっちゃうところとか(考えたから正解おねがい!)。
突然川柳の引用が始まって、川柳作品とそれに対するツッコミが5,6ページ続くところとか。そこだけ別の本みたいだった。

手品や文芸がテーマなのは始めの二章なので、もしかしたら、取っつきやすくするためにわざと「身近な話題をさらっと次々に挙げていった」のかもしれないけど、逆に読んでいて消化不良気味な感じがしました。
むしろ三章目以降の方が読みやすかったなぁ。

自然界での「だまし」、すなわち「擬態」については、章間のおまけコラムにまとめられているのみなのですが、これまた興味深かったです。もうちょっとじっくり読みたかったけど、まぁ本書は「だます心 だまされる心」だから、人間メインにならざるを得ないか。
むしろ、擬態はそれだけで本が出てるくらい奥深いジャンルみたいだし、これに関しては別途探して読もう…。

最後に、「ほー」となった小ネタをひとつ。

フィッシング詐欺」は、もっと手が込んでいます。
(中略)
「フィッシング」はphishingと表記されます。電子空間の大海からユーザー情報を釣り上げるという意味では「釣り(fishing)」そのものなのですが、「手が込んでいる」という意味の英語「ソフィスティケイティッド(sophisticated)」の「フィ(phi)」を取り入れて、新しい詐欺用語がつくられたのです。

そうだったのか…。