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本条蔵 -ホンジョウゾウ-

本やゲームなどの感想です。まだまだ移行作業中。概ね敬称略です…。

raiL-soft 「霞外籠逗留記」

記憶を失くした青年・築宮清修(つきみや せいしゅう)は、気が付くと小舟の上にいた。
舟の主であるという女性「渡し守」から勧められるまま、清修は ある旅籠に身を寄せることになる。
まるで無計画に改修を重ねたような、巨大で 外界と隔絶されたその旅籠には、たくさんの「お手伝いさん」や、彼女たちを統べる「令嬢」、夜毎に酒場で唄を吟じる少女「琵琶法師」、なぜか「鬼女」と呼ばれている図書室の司書らが暮らしていた。
築宮は、彼女たちとの触れ合いのなかで 失くした過去を取り戻すことができるのか、それとも…。


コンプしました。プレイ日記はこちらに。
霞外籠逗留記 (1) - 今日のゲーム
霞外籠逗留記 (2) - 今日のゲーム
霞外籠逗留記 (3) - 今日のゲーム
霞外籠逗留記 (4) - 今日のゲーム


【システム】 ★★★★☆☆

画面いっぱいに描かれた 立ち絵やイベント絵の上に重なるようにして、画面の半分くらいに 文字がどぱーっと表示される形式の、ノベル作品です。
選択肢は かなり少なくて、序盤の「ヒロインの選択」と 終盤の「エンディングの選択」のときくらいしか選択肢がない。本当に、「恋愛アドベンチャー」ではなく「ノベル」という印象の作品。

公式サイト
トップページhttp://www.liar.co.jp/raiL/にリンクし直してください。

の「システム」のページからも 「ノベルであること」へのこだわりが伺えますが、具体的には、プレイヤーが 「メッセージの縦書き/横書き」、「フォント」、「文字の大きさ」、「ルビの有無」、「テキストの表示位置」などを選択できるようになっています。

…でも。残念だけど、これらの設定は 力の入り具合のわりに、あまり使い勝手がよくなかった気がする。
「文字の大きさ」については、「大」でも やや小さめに感じてしまって、個人的には「フルスクリーン+フォント大」以外では疲れちゃうかな、という印象。モニターの解像度の問題なんだろうけど。
「テキストの表示位置」についても、例えば「立ち絵の女性と、文字が重なってしまって 読みづらい」→「文字表示位置設定を『画面の左』から 『画面の右』に変更」→「文字と一緒に 立ち絵も右に移動しちゃう」…orz、とか。

テキスト以外で気になったのは、「BGM」や「声」のオン/オフ設定はあるのに、それぞれの音量設定はない、という点。
シンプルな作りのゲームだけに、そういった 「シンプルな微調整」を出来るようにして欲しかった。


【キャラクタ】 ★★★★☆☆~★★★★★☆

メインの登場人物は5人くらい。シンプル!

築宮清修
 …主人公の青年。過去の記憶を持たない。礼儀正しく、潔癖で不器用な性格。
渡し守
 …主人公を旅籠へと導いた女性。般若の割面をつけている。面倒見の良い姉御肌。
令嬢
 …旅籠の若女将。表情に乏しいが、礼儀正しく 利発な印象の少女。
琵琶法師
 …酒場に現れ、直垂姿で琵琶を奏でる少女。言動は純真で、浮世離れした雰囲気を醸し出す。
鬼女
 …図書室の司書。言動に 知性と色気を同時に漂わせる、謎めいた女性。


【ストーリー】 ★★★★☆☆~★★★★★☆

「廊下の脇に水路を張り巡らせた、和風と中華風が8:2くらいの 巨大な旅籠」を舞台とした、幻想的で、どこか気怠く、ときに清々しく、妖しい物語です。
どのヒロインの物語(ルート)も、「清修の過去」「旅籠の不思議」「ヒロインの内面」を絡めながら進んでいくのですが、それぞれにウェイトや切り口が異なる感じ。

各ルートの中心軸は どれも印象的で、エンディングに至る流れもドラマティックなのだけれども…なにかこう、全体的に「もう一声」という感じがする。
上手く言えないのだけど、各シーンの「ネタバレ」のタイミングが早すぎるのかな、と。
例えば、「同じ時間帯に、違う場所に 同一人物が登場する」シーンがあったとしたら、私だったら しばらくの間は「どっちが本物なの?」っていう疑心暗鬼を楽しみたい、或いは 敢えて時間軸を曖昧に記述してもらって「…あれ?今のシーン、なんかおかしくなかったか?」みたいなのを味わいたいのだけど、この作品では 早々に「この人、いつもと雰囲気が異なるのではないか?」みたいな指摘が 地の文に出てきたりする。

あと、一部のエンディングにも ちょっと不満があるのだけれど…これはネタバレ欄に書こう。


【テキスト】 ★★★★☆☆

一文が長く、少し時代がかった文体であるため、人を選ぶ作品だろうな、と思います。
慣れてくると、その文体と「水路が張り巡らされた、複雑な造りの旅籠」とがリンクしてきて、波にたゆたうような 何とも言えない読感が味わえるのですが…。(ただしちょっと眠くなる)

上にも書いたけれど、「ネタバレが早めである」ところは 個人的にマイナスです。
中でも「鬼女」ルートでは、途中途中で 各章のタイトルみたいなものが表示されるのだけど、それが表示された時点で、もう その先の展開がだいぶ読めてしまう、という…。

あと、「各エピソード」と「そのルートの大筋の流れ」が 調和し切れていないというか、ルートによっては 「ひとつの物語」というよりは「断片の積み重ね」になってしまっていて、その辺りも やや微妙かな、とか。
一方で、それが「とりとめのない夢」のような、独特の世界観と なんとも言えない相互作用を及ぼしたりもするので…その辺は 難しい。


【ビジュアル】 ★★★★★☆

ややクセのあるキャラデザインですが、幻想的な舞台にマッチした 素敵な画だと思います。
えっちしーんの蠱惑的な魅力も素敵だけど、ホラーなシーンの迫力が、やっぱり凄いよ…。


【えっち】 ★★★★★☆

文学的な表現というか、やや古めかしい言い回しが多いのは えっちしーんにも共通なのだけど、それが変に浮くこともなく、逆に妖艶な雰囲気を醸し出すというか…。

長すぎず、それでいて濃厚で、わりと好み。あとは、ヒロインによる実況が もう少し控えめならね…と思います。


【音楽】 ★★★★★☆

オープニングの「カスミカゲロウ」、和風不思議音階で かなり好みでした。

兄弟ブランド(親ブランド?)であるライアーソフト作品、例えば 楽曲が神すぎる「腐り姫」や、曲のバラエティーが半端ない「サフィズムの舷窓」などと比べてしまうと さすがに一段落ちる印象ではありますが、一作品としては たぶん十二分。

ただ、琵琶法師のルートで BGMにあまり琵琶っぽさを感じなかったので、そこはちょい不満です。
だからこそ、プレイヤーの頭の中で「類い希なる音」への想像が広がる…というのも確かにあるのだけれども。


以下、エンディングに関するネタバレを 盛大に含みます。要注意。



ズルい。

本編(令嬢・琵琶法師・鬼女)ルートをプレイしているときは、「エンディング近くが ややご都合主義だなぁ…」(特に令嬢と琵琶法師)とか、「シーンが断片的で、不完全な物語って感じだなぁ…」とか思っていたのに。
渡し守編をプレイし終わると、それらの「不完全さ」が、「少年と少女の、拙くも豊かな想像から産まれた世界」という設定に パズルのピースみたいにぴたっと填り込んで、全部が「だからこそ!」になっちゃう。
ズルい。

もっとも、それにしたって、琵琶法師のエンディングは やっつけな感じがしてしまって、やはり残念ではあります。その直前、屋根の上でのあれこれが素晴らしかっただけに、余計…。

エンディングが一番好きなのは、鬼女かな…。
反面、「貘」の章などは もうタイトルからして展開が読めすぎるのがアレだったし、一連の章が 「連作短編」というよりは「短編集」っぽくて ブツ切りすぎる印象はあったものの…それが逆に「図書室」っぽくてアリな気もするし、…「鬼女ルートそのもの(全体)」が好きなのか、と聞かれると難しいです。
とは言え、最初の「文車妖妃」と、終盤の小舟でのあれこれ、そこからエンディングに至る流れは かなり神掛かっていたし…!

渡し守ルートは、もっと あの姉御っぷりに甘えたかったのに…あんなホラー展開になるとは…!

それにしても、コンプ後には 色んな事が頭をよぎりますね…。
各人物が 姉「みづは」のペルソナのような存在なのだとしたら、各人物は 彼女のどんな感情が具現化したものなんだろう、とか。鬼女と渡し守の間の緊張感は、何を意味していたんだろう、とか。