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本条蔵 -ホンジョウゾウ-

本やゲームなどの感想です。まだまだ移行作業中。概ね敬称略です…。

ニトロプラス 「沙耶の唄」

主人公の青年・匂坂郁紀(さきさか ふみのり)は、ある事故の後遺症により、周囲の人間や景色など全てが「グロテスクな肉塊」として認識されてしまうという現象に悩まされていた。
己を取り囲む環境の激変に 精神を蝕まれていく郁紀だったが、ある日彼は、唯一「人間の姿」として認識できる少女・沙耶と出会う。
失踪した父親を捜しているのだという沙耶に、郁紀は次第に惹かれていくのだが…。

事前に「狂気」「沙耶という少女」「病院」というキーワードのみがインプットされていたので、「沙耶という妹的少女が精神を病んで入院してて、主人公はその娘を見守りつつ狂気に感染していく」ようなイメージでプレイし始めたら……病んでいるのは自分でした。あわわ。

さて。

この作品は、シナリオ分岐型のノベルゲームです。全てのエンディングを見終わるのに 3~5時間程度しか掛からない、ボリューム控えめの作品。

上記のストーリー概要からも伺えるかと思いますが、ジャンルは「日常から逸脱していく純愛ホラー」です。
「背景CGのほとんどが肉塊」というあたり気合いが入っていますが、「グロテスク画像にエフェクトをかける」設定もできますよ。私はその設定を使わなかったので、実際どんな感じになるのかわからないのですが、まぁ、お好みで。

肉塊と化してしまった友人たちとの関係に戸惑いながら、郁紀は沙耶の父親探しをする。そんな郁紀のことを、友人たちは心配する。そして沙耶は、郁紀が少しでも快適に過ごせるように手を尽くす。
…と、それぞれが それぞれのために動いているだけなのに、何故か 運命が軋んでいってしまう。それが哀しくて、なのに幸福で、グロテスクで、デカダンで、インモラルで、だけど美しくて。
クリアしてから一週間経つのですが、まだ余韻に浸っています。

シナリオは、「Fate/Zero」や「魔法少女まどか☆マギカ」でもお馴染みの虚淵玄氏です。推して知るべし、というか何というか。

以下、盛大にネタバレを含みます。未プレイの方はご遠慮下さい、っていうか買うがよいのです!廉価版なら3,000円しないぞ!ついでに「Phantom INTEGRATION」と「鬼哭街」も買ってしまえ!


世界にのめり込んでしまった(まだ抜け出せていない…)一因として、「郁紀が一度も沙耶を拒まない」というのが挙げられると思います。

もしも自分だったら、どこか途中で 必ず一歩引いてしまうと思うんですよね。「この女何者だ…?」とか、「こいつ怖い…」とか。だけど、郁紀にはそれがない。沙耶のすべてを受け止める。そして、自分も「沙耶の側」に行ってしまう(ギリギリで思いとどまるエンディングはあるけど)。
一方、沙耶も沙耶で(ひょっとしたら、彼女の目に「人間」は「化け物」のように映っているのかもしれないけれど)、ひたすら一途に恋をする。郁紀のために、文字通り全てを捧げようとする。

エンディングが3つしかないのは やや寂しいような気もしたけれど、この作品は これで完結しているんだ、と思います。例えば、郁紀と沙耶が殺し合うようなエンディングは存在し得ないのが、この作品なんだ、と。
エンディングは…どれも好きだなぁ。ほんと、3つとも心に染みる。

それにしても、ニトロプラス作品は音楽(特にボーカル曲)の使い方が絶妙だな。「鬼哭街」のエンディングで流れる「涙尽鈴音響」は鳥肌モノだったけど、今作の「沙耶の唄」も凄かった…。

余談ながら、ハイパージョイには「沙耶の唄」がフルバージョンで入ってました(2007年1月現在)。歌手名「いとうかなこ」で検索するのが確実かも。
フルバージョンだと途中途中で台詞が入るので、こっぱずかしいです。歌うときは相応の覚悟を持って!