本条蔵 -ホンジョウゾウ-

本やゲームなどの感想です。まだまだ移行作業中。概ね敬称略です…。

小手川ゆあ・枡野浩一 「ショートソング 2」

ショートソング 2 (ジャンプコミックスデラックス)

ショートソング 2 (ジャンプコミックスデラックス)

ショートソング (集英社文庫)

ショートソング (集英社文庫)

あこがれの舞子先輩に連れられて「歌会」に参加することになった青年・国友克夫。彼はそこで、歌人・伊賀寛介と出会い、彼のおもちゃ弟子的な存在として、短歌を学ぶことになった。
短歌結社「ばれん」の頂点に君臨する歌人・五百田(いおた)の姿勢に反発する佐々木瞳、同じく五百田に疑問を抱えつつも 身辺(主に女性関係)がごたついている伊賀寛介、伊賀寛介を想うがゆえに諦観を覚えつつある須之内舞子、心酔する寛介の言動に一喜一憂する国友克夫。
それぞれの恋愛模様と短歌への思いが描かれる、完結編です。

漫画版1巻の感想

漫画版の感想と、原作小説(全1巻)の感想、併せて書いちゃいます。
今回はネタバレが多めです。

まずは、漫画版の感想をざっくりと。

伊賀寛介にとっては、今までのツケが一気に回ってくる巻。
国友克夫にとっては、自身の「童貞性」を受け入れ、敬愛する伊賀寛介を越えて行こうと歩き出す巻。
須之内舞子にとっては、寛介との「つきあい方」を学んで楽になったのが、吉と出たのか凶と出たのか……という巻。
佐々木瞳にとっては……。あれ?瞳さん?

寛介の原点(得られなかったものや弱点)が描かれたことで、普段の彼の「やりたい放題っぷり」にも別の味わいが出てきた感じ。だからといって、全部赦されるわけじゃないんだけどな!
終盤に向けての「踏んだり蹴ったり」も、コメディ調で描かれているので、重すぎず。重すぎないけど、ちょっとドタバタしすぎだし、詰め込んじゃった感じもする。意地の悪い表現をするなら、どこか「打ち切り作品」感みたいなものが。

克夫は中盤以降、「おもちゃ」の座からの脱却を図って。
前向きになったのはいいけど、終盤、ちょっと急成長しすぎかなぁ(特に最後の喫茶店でのシーン)。

舞子は、寛介との「つきあい方」を理解しちゃったのが、哀しいなぁ。
個人的には、オシャレカフェのシーンで、少し動揺して欲しかった気がする。「せっかく折り合いがついてきたのに、どうして今更」的な。……でも、やっぱり違うのかな。もうその段階はとっくに過ぎちゃってて、だからこその結末なんだろうな。
バイトのワンシーンが唐突で、色々引っかかっちゃったので、原作を楽しみにしていたのだけれども(後述)。

トータルで、ラブコメと短歌のバランスがとても心地よかったです。さりげなく、でも絶妙なタイミングで、素敵短歌が出てくる。
たぶんこれ、短歌に興味が全くないひとでも、すんなり面白く読めるんじゃないかな。

ここからは小説版の感想。

寛介のエロさ(というかだらしなさ、というかダメダメさ……?)は、漫画版以上だったー!
あと、克夫の童貞っぽさも漫画版以上。こいつぁ童貞だ。
そんなこんなで、エッチシーンは多めなのですが、文章のノリがライトなので、さくさく読めちゃう。

これは完全に好みの問題なんだけど、チャプター(=視点)が変わる毎に、「知らない女と……」みたいなミニタイトルが挿入されるのが、ちょっと煩わしかったです。煽られてるような、なんというか。

鎌倉編(田尾坂真由香を巡るあれこれ)は、漫画版のアレンジの方が好きだなぁ。ネタバレのタイミングとか、色々。
小説版の方が、いろんなサイドストーリーや小ネタが入っていて、情報量は多いし読み応えはあるのだけど、流れやまとまりがもう一声な印象で。
そう考えると、ラブコメとして、ストーリー漫画としての流れ(シーンの順番)なんかは、漫画のアレンジは全体的に成功していた気がする。最初の歌会での、舞子先輩の離脱のあれこれとかも、漫画版の方がすっきり入ってきたし。
もちろん、小説版のような、「理由がわからなくて悶々……」みたいな描写も、そちらはそちらで面白かったのだけど。
原作は小説として、漫画版は漫画版として、それぞれの良さがあった(各形式の特長が出てた)、ということなのかも。特に「寛介&瞳と、克夫&舞を巡る一夜」などは、小説版も漫画版も、それぞれ違っていて、それぞれに好き。

で、漫画版→小説版という読み方をして、気になったところがふたつ。

ひとつめは、「漫画版オリジナルの、舞子のバイト風景、あれ必要だったのかね?」という。
舞子は舞子で、誰も知らない一面がある、というのはいいんだけど。いいんだけど、「舞子はそういう女でした」みたいな、そういう解決になっちゃってないかなぁ。
敢えての「瞳」も、意味が籠もりすぎる気がする。

ふたつめは、結社「ばれん」の起源、なぜ漫画版では削っちゃったのさー!という。
舞子&更紗&五百田&克夫によって、寛介が徹底的に「バレンタインの復讐!」を受けるというテーマ(オチ?)で纏まってたんと違うのー!?
(後日追記:バレンタインの復讐、つまり「チョコレート革命」なのかー。色々凝ってるなぁ……。)

肉子 「100回お見合いしたヲタ女子の婚活記」

100回お見合いしたヲタ女子の婚活記 (Next comics)

100回お見合いしたヲタ女子の婚活記 (Next comics)

28歳のヲタク女子が、結婚相談所を経由して婚活に励む姿を描いた、レポート漫画です。

テーマ自体は何気に重いのですが、散りばめられたヲタネタや、適度に客観視されたレポート調の語り口によって、さっくりと読めるのが魅力。

ヲタネタに関しては、作中や欄外に元ネタ解説があるので、元ネタを知らなくても楽しめるんじゃないかな。
私は「BL系や乙女ゲーに食指が動かない女ヲタ」というニッチなアレなので、「この元ネタは知ってるけど、腐女子フィルターがかかると楽しみ方がこう変わるのかー」みたいなのもあって、色んな意味で楽しかったです。蒼天航路とか。

「婚活中、こんな(変な)相手に遭遇した!」という、変な生き物図鑑としても面白いし。
様々な「結婚相談所」や「婚活パーティー」の仕組みがざっくりわかる、という業界レポートとしても興味深い。

そして、「婚活」を経て、著者の意識が徐々に変わっていくところは、色々と考えさせられました。
「相手を見つける」には「自分は何なのか/どうありたいか」を見つめ直す必要があるわけで……。

紆余曲折を経たラストにはグッと来ました。正直、ちょっと涙目に。

pixivにも掲載されているので、そちらで全部読んでしまうのもテだし、読破後にお布施風味に購入するのもテだし、最初の方だけチラッと見てみて面白そうだったら買うのもテだし。
100回お見合いしたヲタ女の漫画婚活記 #1
後日談などもあるので、本書を読み終えた方も、見に行くと良いことが。

上記リンクにもいきなり登場する、担当アドバイザーのアヤメさんが格好良すぎます。結婚してくれ!(既婚者です)(女性です)

小手川ゆあ 「ショートソング 1」

ショートソング 1 (ジャンプコミックスデラックス)

ショートソング 1 (ジャンプコミックスデラックス)

あこがれの舞子先輩に連れられて、半ば無理矢理「歌会」に参加することになった青年・国友克夫(くにとも かつお)。
その会場で克夫は、舞子先輩の彼氏である歌人・伊賀寛介(いが かんすけ)と知り合う。
克夫の才能をいち早く見抜いた寛介は、イノセントな克夫に対して仄かな嫉妬を抱きつつも、克夫をイジりつつ指導することで、己の行き詰まり感と折り合いをつけようとしていた……。

原作は、大好きな歌人であり、コラムニストや芸人としても活動中の枡野浩一さん。
作画は、こちらも大好きな漫画家である小手川ゆあさん。

最近、ツイッターでこんな呟きを見かけて(登場人物の名前の元ネタ一覧)
須之内舞子→……
「これは未読本棚に積んでる場合ではないぞ」と慌てて発掘してきた次第です。

女好きで自己中な寛介。寛介を想う舞子。そんな舞子に想いを寄せる克夫。
そして、寛介たちの短歌仲間である大人びた女性・佐々木瞳(ささき ひとみ)らの交流を描いた、短歌と恋情が交錯するストーリーです。
登場人物が抱える、それぞれの「短歌」への想い、そして友情や恋情が面白い作品。

……なのだけど、初読時は「名前のアナグラムすげー!」とか「性別反転しててたのしー!」とか、メタな楽しみ方をしてしまいました。
ストーリーを落ち着いて純粋に楽しめたのは、むしろ二回目以降だったり。

克夫とダブル主人公であるところの寛介が、それなりの地位と実力を持ちつつ、それゆえに葛藤しつつ、そしてどうしようもなく女性にだらしなくて、ダメ男だけど魅力的です。
そして克夫イジリが鬼で楽しい。陰湿に虐めるんじゃなくて、タチの悪いちょっかいのような感じで。そして、最終的にはそれらが寛介自身に返ってきたりするところも何とも言えず。

要所要所で短歌が挿入されるのも面白いです。
特に枡野さんと柳澤さんの歌は、知っている作品が多かったので、「このシーンでこれかー!」という、ある種の「してやられた感」も楽しくて。
知らない歌人さんの作品群も素敵なものばかりで、また欲しい歌集が増えてしまった(でも今ちょう金欠!)という、嬉しい悲鳴が。

舞台が吉祥寺なのも嬉しいところ。
「わ、ここのカレー食べたことあるよ!」とか、「このサーティーワン、昨日通り過ぎた!」とか。色々交錯するものが。

もっと短歌界に詳しいひとなら、フィクションの裏に見え隠れする様々なノンフィクションに戦慄したりするのかもしれない。
たとえばこう、派閥とか……恋愛模様とか……。
そこまで知らなくて良かった。本当に良かった。うん。

作中には柳澤真実さんの作品も多く引用されてるけど……そういえば、「君と小指でフォークダンスを(仮題)」(柳澤真実)の出版って、どうなったんだろう。
今は無きの新風舎「TILL」(文芸投稿雑誌)にも、単行本制作日記とかが載ってて、凄く楽しみしてたんだけどな。

何はともあれ、「ショートソング」の2巻を買おう。早急に。

押切蓮介 「ミスミソウ 完全版 上・下」

ミスミソウ 完全版(上) (アクションコミックス)

ミスミソウ 完全版(上) (アクションコミックス)

ミスミソウ 完全版(下) (アクションコミックス)

ミスミソウ 完全版(下) (アクションコミックス)

大津馬中学校は、今年度いっぱいで廃校となることが決まった。
そんな過疎地の中学校に、東京から転校してきた少女・春花。「よそモノ」である彼女は、クラスメイトたちから激しい虐めを受けながらも、家族を心配させたくない一心で、日々を静かに耐えていた。
しかし、そんな彼女の覚悟を嘲笑うかのように、火事で両親が亡くなり、妹も瀕死の火傷を負ってしまう……。

スプラッタサイコホラー……かな。
女の子に酷いことした子たちが、次々に酷い目に遭わされる話。ってまとめちゃうと身も蓋もないですが。
「誰が春花の家に火をつけたのか」「虐めのきっかけは何だったのか」などの、ミステリ要素も含まれた復讐劇です。

虐めの加害者たちが襲われていく、というと勧善懲悪のようだけど、そういった痛快さは残念ながらナッシングです。
かといって、惨劇を止めたい気持ちも働かない。死ぬべき人たちが、当然のように死んでいくのを見てる感じ。
もっとも、惨劇の被害者の中には「傍観者」的ポジションの人もいるのだけど……まぁ、同罪と言えば同罪ではあるし……なんとも。

そして、行き過ぎた悲劇は喜劇と紙一重である、というか何というか。
読んでいると、だんだん、滑稽に思えてくる瞬間があってこわいです。内臓とかが。

ある意味バトル&アクションであはるけど、カタルシスは得られないので、そういうのを求めちゃダメだと思う。
私自身、口直し(?)に高橋慶太郎を読み直したクチだったり。

絵柄に関しては、表紙のイメージで本編を読み始めると、それなりに違和感を覚えます。
他の作品の表紙の方が、実物に近いというか、何というか。どちらも実物なんですけど。
http://www.amazon.co.jp/%E6%8A%BC%E5%88%87-%E8%93%AE%E4%BB%8B/e/B003UWSNPE/ref=ntt_athr_dp_pel_1

水城せとな 「失恋ショコラティエ 6 」

失恋ショコラティエ 6 (フラワーコミックス)

失恋ショコラティエ 6 (フラワーコミックス)

高校時代の失恋を引き摺るショコラティエ・小動爽太(こゆるぎ そうた)が、自分のお店「ショコラヴィ」を開店して一年半。
爽太の失恋のお相手(?)である女性・サエコは、相変わらずお客として時々店を訪れていた。
そんなある日、爽太はセフレのえれなに、「サエコにもう一度告白して、ちゃんと振られてくる」と宣言するのだが……?

爽太の妹・まつりは、元カレへの未練を断ち切れない。
爽太を密かに思い続ける店員の薫子は、えれなの存在と、自分の不甲斐なさにイライラを募らせる。
同じく店員のオリヴィエは、自分の恋愛に確信が持てず、好きなはずの相手につい駆け引きを仕掛けてしまう。
良きライバル店である「リクドー」の店員・関谷は、薫子からのメールに返信せず及び腰。
そんな、それぞれの恋模様が錯綜する一巻です。

さっき昼寝をしてたら、リクドーさんのお店にチョコを食べに行く夢を見ました。
はよ感想を書けということですね、そうですね。
……恋愛模様も気になるけど、本当にどれも美味しそうなんだ、作中のチョコが。「赤ワインとハチミツの効いたイチジクがゴロッと入ってる大振りチョコ」とか!「カリカリのほろ苦キャラメルの入ったボンボン」とか!

閑話休題。

既に人のモノでありながら、爽太に絶妙な駆け引きを仕掛け続けるサエコ。
そんな彼女は、爽太の告白を受け入れるのか?
……受け入れてくれるな!君は心底すごい女性だけど爽太には勿体ないし、えれなさん超いい人だぞ!そして薫子さんも何らかの形で幸せになってほしいです!という局面です。三行目以降、多分に私情が盛り込まれておりますが。

「駆け引き」と書くとドロドロ愛憎劇のようですが、サラッとしたタッチなので、爽やかではあります。
それでいながら、色々と突き刺さる感じ。ちょっとした会話だとか独白だとかが。突き刺さるというか、のたうち回りたくなるというか。

なんというか……「1巻で爽太がオリヴィエ先生の言うとおりにしていれば話は早かったのに!」という気がしないでもないですが、それじゃダメだったんだろうな。
サエコが様々な理想と現実に直面して、疲れてきた今だからこそ隙が生まれてるというか。

次巻は今年の秋冬頃かな。待ち遠しい限りです。

俵万智 「プーさんの鼻」

プーさんの鼻

プーさんの鼻

自分が、結婚以降 短歌から遠ざかってしまった一因は、かつて恋愛がらみの短歌ばかり作っていたもんだから、なんだか立ち位置との折り合いが付かなくなった……みたいなのがあって。

そんな七年間で、ほぼ唯一購入した歌集が、この「プーさんの鼻」。
俵万智ですよ。短歌はおろか本を全く読まない人にまでその名前と第一歌集のタイトルが知れ渡ってて、最近では国語の教科書にも載って(いるらしく)て、歌人・枡野浩一をして『こわいのは生まれてこのかた人前であがったことのない俵万智』と詠ましめる、とにかくそんな俵万智なんです。
1997年に発売されて話題となった「チョコレート革命」以来、8年振りの新歌集。買うでしょ。

……と購入したものの、前述のように何だか「折り合いが付かない」感じで 読みかけては中断したり、結婚当時はまだ「子供」という存在がピンと来ないモノだったり(子供はどちらかというと嫌いだったのです…)、いざ子供が生まれたら生まれたで しばらくは寝不足で頭の中が「寝ろ!寝て下さい!」一色だったり、PC版「シュタインズ・ゲート」(ゲーム)がなかなかコンプできなかったり、「シヴィライゼーション4」(ゲーム)も面白かったり、そんなこんなでまた数年が経ち。

やっと最近、本を読んだり短歌を詠んだりする余裕が出来てきたので、満を持して通読してみました。

厳密には、アレだったりします。
少し前に、(個人的には)難解としか思えない、意味がわかっても良さがわからない、みたいな短歌を幾つかまとめて読んだことがあって。
そんなときに、「やっぱり文語体は難しいにゃー…俵万智みたいな読みやすいのがいいにゃー…」と無性に俵衝動に駆られて読み始めたものだったりするのですが、数首読んで気付いた。俵万智、別に口語一本槍じゃなかった。

朝も昼も夜も歌えり子守歌なべて眠れと訴える歌

文語っぽい表現の歌もそこそこ多いのに、「難しい」「取っつきにくい」印象は皆無。
それだけこなれてる、ということなのかもしれない。

もちろん、口語メインの歌も多いよ。

親子という言葉見るとき子ではなく親の側なる自分に気づく

時差はいつも酒の差としてどちらかが酔ってかけてる国際電話

歌集としてはもちろん、「あるある育児ネタ本」としても面白かった一冊でした。
もはや「懐かしい」の域に達しつつある息子の乳幼児期を思い出しつつ、苦笑いしたり、温かい気持ちになったり。

子供ネタが苦手な方なら、「プーさんの鼻」や「夏の子ども」など、特定の章だけ飛ばしてしまえば、他の歌集と同じように、切なかったり生々しかったりする恋愛短歌や、旅情短歌、家族短歌などがお楽しみ頂けます。
頂けますが、それは「一冊の本の約半分を読み飛ばす」ことと同義だったり…。

子供関連以外の話をすると。
「父の定年」の章は、以前の歌集にも度々収録されていた父親短歌の、アンサーソングのような味わいがあって。
「弟の結婚」は、少しだけブラコン気味と言いましょうか、目出度くも切ない心情が、何とも言えない味わいの章でした。異性のきょうだい、いいなぁ。
それ以外の章は、「少しだけいけない恋をしている」印象の歌が多いかな。
…うん。やっぱり新婚当時に読むべき歌集ではなかったかもしれない。「子供」的な意味でも、「恋愛」的な意味でも。

アンサーソングと言えば、例えば『六年とう月日~』の歌には、『それならば五年待とう~』(「サラダ記念日」)を思い出したり。
実際には関連など特にないのかもしれないけど、「もしかして」と想像できるワードが、幾つかの歌にあって楽しかったです。

恋愛短歌は、例によって「抱く」「口づけ」などが多めではあります。まぁ、恋愛ですし。
それに、L'Arc-en-Cielが「鮮やかに降り注ぐ」のに比べたら全然アレですけど。あ、でもラルク大好きです。CDもかなり持ってるぞ。
http://katuru2ch.blog12.fc2.com/blog-entry-2984.html

閑話休題。

なんだか、「既刊の歌集を読んでることが前提」みたいな感想になっちゃったけど。
初見でもわかりやすいし、洗練されているし、味わい深いし、切ないし、艶やかだし、だけど、既刊作品を未読の方に「最初に手にとるべき俵万智の本」としてプッシュしたいかというと、ちょっと違う気はする。

「これから俵万智の短歌本を読みたいんだけど」という方には、がっつり読みたい場合は「サラダ記念日」か「かぜのてのひら」、サラッと読みたい場合は「とれたての短歌です。」か「もうひとつの恋」をプッシュしたい気持ち。
「とれたて~」と「もうひとつ~」は、浅井愼平の素敵写真とのコラボが美しい一冊です。初めて手に取った頃は、浅井愼平には「象印クイズ ヒントでピント」の印象(最終問題でこのひとがボタンを押すと女性チームに死亡フラグが!)しかなかったのも、良い思い出…。

サラダ記念日 (河出文庫―BUNGEI Collection)
かぜのてのひら (河出文庫)
とれたての短歌です。 (角川文庫)
もうひとつの恋 (角川文庫)

でも、俵万智ビギナーが「幼児を抱えている親御さん」な場合は、猛プッシュしたい一冊です。
「なんで子供はタグをがじがじするのが好きなんだぜ?」みたいな、共感ばりばりの歌が多いよ。

岩澤紫麗 「家電探偵は静かに嗤う。 1 」

家電探偵は静かに嗤う。 1 (チャンピオンREDコミックス)

家電探偵は静かに嗤う。 1 (チャンピオンREDコミックス)

正義感が強く、美人ではあるものの、手が早くてトラブルメーカーな刑事・小野寺アンヌ。
彼女がパソコンの修理に訪れた「瞬速家電修理社」には、怪しげな修理員がいた。
彼の名は家山電(いえやま あかり)。アンヌのパソコンを直しながら、彼女の職業や生活習慣を次々に言い当てる電に、アンヌは捜査への協力を依頼するのだが…?


原作は藤見泰高。同じく彼が原作を担当している「ベクター・ケースファイル 稲穂の昆虫記」が、前から気になっていたのだけど、迷っているうちに10巻くらい出てしまって…大人買いするには勇気がいる感じに…。
代わりに、と言ってはアレだけど、既刊3巻なこちらの方を買ってみました。

以前感想を書いた「冷蔵庫探偵」
佐藤いづみ 「冷蔵庫探偵 1」 - 本条蔵 -ホンジョウゾウ-
みたいなものを想像していたのだけど…ほら、「現場に残された家電を一瞥して、犯人を言い当てる」という「出張安楽椅子探偵」みたいな?

でも、実際はもうちょっと娯楽寄りというか。
「家電から犯人のアタリをつける」のはその通りなのだけど、「家電屋仲間の裏掲示板から、該当家電購入者の情報をゲットする」とか、「家電知識をフル活用してコスプレ衣装作り、それをまとっておとり捜査をする」とか、イロモノ臭もふんだんに盛り込まれております。
逮捕の際も、犯人は基本フルボッコ!

家電にまつわる豆知識やトリックは面白いし、もうちょい「正統派」なタッチの方が好きなんだけどなぁ。
そりゃまぁ、ナイスプロポーションのおねえさんが毎回戦うっていうのも、それはそれで好きなんですけど。出来れば別々に楽しみたい派。

2巻以降を購入するかどうかは微妙かな。
おもしろいんだけど。おもしろいんだけど、ソウジャナイ感が。